プラハからぐっと北へ、ドイツの国境に近いボヘミアンスイスに、チェコ旅の中でも忘れがたいクラフトビールの醸造所があります。
小さな町クラースナー・リーパ(Krásná Lípa)の中心広場に建つブルワリー「Pivovar Falkenštejn(ピヴォヴァル・ファルケンシュテイン)」。
以前、チェコの地方ブルワリー巡りの旅レポートでも紹介しましたが、この旅の中でもお気に入りの一軒でした。
ただ、プラハから距離もあり、アジアからの旅行者もほとんど訪れない土地とあって、日本語でまとまった情報がほとんど見当たりません。
そこで今回はあらためて、公式サイトの情報をたどりながら、この醸造所の魅力をしっかり紹介したいと思います!
名前の由来から、途絶えた歴史を受け継いだ物語、無濾過・無殺菌にこだわった遊び心あふれるビールの数々、レストランや宿泊、アクセスまで。
いつか訪ねる日の予習として、あるいは「こんな場所があるんだ」と旅気分で読んでもらえたら嬉しいです!
Special thanks!!
Pivovar Falkenštejn
ブルワリーにご連絡し、公式に写真を提供いただきました!
ボヘミアンスイス:チェコ語で「České Švýcarsko=チェコのスイス」の意で、国境沿いに広がる砂岩の岩山地帯。
※以下の情報は2026年7月現在の情報に基づいています。最新情報を公式サイトでご確認ください!
目次
由来はボヘミアンスイスの岩山

「Falkenštejn(ファルケンシュテイン)」という名は、ボヘミアンスイスならではの砂岩の岩山を象徴する2つのランドマークに由来しています。
ひとつはイェトシホヴィツェ近くにそびえる岩の城「ファルケンシュテイン城」、もうひとつはドイツ側のバート・シャンダウ近くにある巨大な砂岩の岩塊「ファルケンシュタイン」です。
ドイツ語で「鷹の岩」を意味するこの名前は、国境をまたいで広がるこの一帯の風景そのもの。掲げているテーマも「ボヘミアンスイスのビールを知ってもらう」ことだといい、名前の時点で、もうこの土地と分かちがたく結びついているわけです。チェコビールというと、どうしてもピルスナーやプラハ周辺が思い浮かびますが、ここは「岩山と森のビール」。それだけでちょっと惹かれませんか。
2013年創業|途絶えたクラースナー・リーパの醸造史を受け継ぐ

意外にも、このブルワリーの創業は2013年と、わりあい最近のこと。ですがその背景には、一度途絶えた地元の醸造文化を、もう一度つなぎ直すという物語がありました。
クラースナー・リーパの醸造の起源は、産業革命に沸いた19世紀後半にさかのぼります。
当時、醸造家コルネリウス・ホイザー(Cornelius Häuser)が「Brauerei Schönlinde(クラースナー・リーパのドイツ語名にちなむ醸造所)」を興し、急成長する町と、そこで働く工場労働者たちの旺盛な喉の渇きに応えていたそうです。
ところが、この醸造所は第二次世界大戦後に醸造をやめ、1960年代には建物ごと取り壊されてしまいます。元の場所での再開は、かなわなくなってしまいました。

その途絶えた歴史を受け継ぐように、2013年、新たなブルワリーが町の中心クシニツケー広場(Křinické náměstí)に生まれます。かつて宿屋や文化施設、産業革命期には銀行としても使われていた、歴史ある市民館を活かした造りでした。
さらに2017年には隣の「白い家(White House)」へと拡張し、醸造設備のほぼすべてをそちらへ移設。同時に宿泊施設も整えられます。元の建物には、ビアバーを併設したレストランと、地域の醸造史をたどる展示ホールが残りました。
旅レポートで「赤い屋根はレストラン、白い屋根はブルワリー」と書いたあの光景。じつはこの拡張の歴史を、そのまま映していたんですね。訪ねたときは何気なく眺めていた景色に、こんな背景があったとは。
無濾過・無殺菌のビール


このブルワリーが掲げるビールづくりの姿勢は、いたってシンプル。
「良質なクラフトビールを醸造する」こと。
現代的な技術も使いながら、伝統的な手仕事の工程を今も守り続けているといいます。
なかでも大きな特徴が、熟成を終えたビールを濾過も低温殺菌もせず、フレッシュなまま提供していること。旅レポートで「まさに生ビール!」と感激したのは、まさにこの哲学そのものでした。

酵母や旨味をそのまま残したこの鮮度は、その場でしか味わえないもの。
ボトルでお土産に買えるとはいえ、やっぱり醸造所で飲む一杯が一番なんだなと、あとから深く納得しました。
ビールラインナップ!定番からユニークな限定醸造をチェック

Falkenštejnのビールは、通年(またはほぼ通年)楽しめる「定番シリーズ」と、季節ごとに登場する「スペシャル」に分かれています。もちろん、どちらも無濾過・無殺菌です。
定番は、下面発酵のラガー系と上面発酵のエール系の2グループ。
ラガー系の看板は、チェコ産の麦芽とホップだけで仕込む黄金色のライトラガー Světák(スヴィエターク)。しっかりした麦芽のボディと、やや高めの苦みが持ち味です。
そこにセミダーク(琥珀色)ラガーの Ostroff(オストロフ)、そしてダークビールの Dittrich(ディットリヒ) が加わります。
この「Dittrich」は町ゆかりの実業家で慈善家でもあったカール・ディットリヒにちなんだ名前なんだそう。コーヒーのように濃い色をしていながら、苦みは驚くほど穏やかで、味わい深い一杯です。
エール系の代表は、アメリカン・ペールエールの Desperát(デスペラート) と、アメリカン・アンバーエールの Rudoch(ルドフ)。柑橘や花を思わせる香りと、見た目以上のしっかりした苦みが楽しめます。
そして暖かい季節(5〜10月)には、軽やかなサマーエール Svižnej Emil(スヴィジュネイ・エミル) が定番に加わります。
旅レポートで「Speedy Emil」と紹介した、あの「ランナーも飲めるビール」です。提携するマラソンイベントに合わせて仕込まれるという遊び心のある一杯で、地元でも「これは永遠に飲んでいられる」と愛されているのだとか。

主な定番ビールのスペックは、次のとおりです。
| ビール名 | スタイル | 度数 | アルコール | 苦み | 提供時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| Světák | チェコ式ライトラガー | 11° | 4.5% | 36 IBU | 通年 |
| Ostroff | セミダークラガー | 12° | 4.8% | 33 IBU | 通年 |
| Dittrich | ダークラガー | — | 5.5% | — | 通年 |
| Desperát | アメリカン・ペールエール | — | — | — | 通年 |
| Rudoch | アメリカン・アンバーエール | 13° | 5.4% | 48 IBU | 通年 |
| Svižnej Emil | サマーエール | 9° | 3.4% | — | 夏季(5〜10月) |
※「度数(°)」は発酵前の麦汁の濃さを表すチェコ・ドイツ式の指標で、実際のアルコール度数(%)とは別物です。数字が大きいほどコクのある濃い味わいの目安になります。
そして、このブルワリーの真骨頂はスペシャルにあります。何より、ネーミングを眺めているだけで楽しくなってくるんです。
「突然死」を意味する強烈な Náhlá smrt(22°・アルコール8.5%という怪物級の一杯)、燻製の香りをまとった Zkouřená čarodějnice(「燻された魔女」)、麻を加えたちょっと変わり種の Kanár、そしてヘイジーIPAの Tropická bouře(「トロピカルストーム」)。
名前だけで、造り手が肩肘張らずビールを楽しんでいるのが伝わってきます!
ビールの種類は通算で30種類以上もあるようですね。スペシャルは時期によって入れ替わるので、訪れたときにどれと出会えるかは運しだいです。
それもまた、行く楽しみのひとつですよね。最新のラインナップは、ぜひ現地または公式サイトで確かめてみてください。
気に入ったビールは、お土産にもできます。0.5Lのガラス瓶、1LのPETボトル、ギフトパック(ガラス瓶3本/PET2本)のほか、樽(20L・30L・50L)での購入も可能とのこと。
旅レポートで瓶ビールを箱詰めしてもらい、宿でしみじみ味わったように、旅の締めのお供に持ち帰るのもおすすめです。
ビールと一緒に評判の料理たちを


Falkenštejnは、ビールを飲むだけの場所ではありません。
醸造タンクを望むビアバーはブルワリーらしい雰囲気にあふれ、店内は70席、夏場は広場に面したテラス(前庭)に50席が用意されるそうです。
シェフのレネ・ヴォクルカ(René Vokurka)の料理は、ビールに合う料理を中心に常設メニューをこまめに入れ替え、ガストロイベントも企画しているといいます。平日には、できたての日替わりランチも登場します。


現地の評判を見ても、料理への評価の高さが際立ちます。
「シェフの料理は絶品」という声のほか、チロル風仔牛のシュニッツェル、ヤギチーズを添えたパンプキンリゾット、鹿ロース肉、バーガーなどが名物として挙がっていました。
自家製レモネードも好評なんだとか。
田舎町の食堂というより、味にこだわったガストロレストラン。地元のビールと美味しい料理を楽しんでください!
なお建物の1階(日本でいう2階)には、醸造史の常設展示があるホールがあり、40席規模で貸切のパーティーや催しにも使えるとのこと。バルコニーから広場を見下ろす眺めも、ちょっとした特等席です。
レストランの営業時間は、月〜木・日が11:00〜22:00、金・土が11:00〜23:00。人気店なので、食事目当てなら事前予約が安心です。
※調査元:クチコミサイト Mapy.com・Tripadvisor より
ブルワリーツアーで醸造の裏側とテイスティングを楽しむ

事前予約制で、ガイド付きのブルワリー見学ツアーも体験できます。所要時間はおよそ45〜60分。「ガイドのおしゃべり具合と、こちらの質問の数しだい」なんて、ユーモアの効いた案内も添えられていました。
内容は、醸造施設の見学と解説に加え、ブルワリーホールでの4種類のテイスティング(各0.2L)つき。最大20名まで、大人数のグループや企業向けには個別の日程調整も可能とのことです。ガイドの空き状況を確認する必要があるため、事前の問い合わせは必須です。
旅レポートでは現地ガイドがチェコ語を通訳してくれましたが、通常のレストラン利用でもドイツ語メニューが用意されているようで、このあたりに国境の町らしさを感じます。
ブルワリーに泊まるという贅沢

旅レポートで「泊まってみたい」と書いた、宿泊施設「Pension Falkenštejn」。ビールと料理を堪能したあと、どこにも移動せずそのまま眠れる。ビール好きにとって、これ以上ない贅沢ですよね。
全11室で、内訳は客室8室とキッチン付きアパートメント2室。ベッド構成はシングル2室、ダブル5室、4人部屋1室、アパートメント2室(3人用・エキストラベッド1台追加可)です。
全室に専用のバス・トイレを備え、料金には朝食が含まれます。館内にはWi-Fiと施錠できる自転車庫もあり、サイクリングが盛んなこの地域の拠点にはうってつけです。
最安値は直接予約(電話またはメール)で、宿泊予約と一緒にレストランの席も押さえておくのがおすすめとされています。
予約サイトでの評判も高く、「広場のど真ん中という好立地」「きれいでモダンな清潔な部屋」「朝食が豊富」「ウェルカムドリンクが嬉しい」といった声が並んでいました!
まとめ

Pivovar Falkenštejnは、無濾過・無殺菌の本格クラフトビール、シェフ・ヴォクルカの料理、居心地のよい宿、そして醸造の裏側をのぞけるツアーまで。そのすべてが、小さな広場の一角にぎゅっと詰まった、なんとも贅沢な場所でした。
日本語の情報もまだ少なく、アジアからの旅行者もほとんど訪れないこの町。だからこそ、チェコをもう一歩深く旅してみたい人にとっては、きっと特別な一軒になるはずです。
プラハのその先まで足を延ばす機会があれば、ぜひ「泊まってビールを飲む」時間まで、まるごと味わってみませんか?
近くのボヘミアンスイス国立公園もぜひ楽しんでください!



















