「”チェコが好き!”という気持ちを、お菓子を通して発信していきたい。」
今回は、チェコのお菓子屋「ツックル」の小澤 美沙季さんにお話を伺いました。
家で揃う材料、庭で採れた果物を使って作られていたチェコのお菓子は、今も「おばあちゃんの味」として慕われているんだとか。
小澤さんとチェコとの出会いや、チェコのお菓子について、またツックルの今後の展望などご紹介したいと思います!
始まりはチェコアニメ
店舗はありませんが、2021年から自分の工房を持ち、オンラインショップやイベント販売、卸販売、ギフトのオーダーメイドなどを行っています。
もう15年以上前になります。
緑の芋虫がキュートに踊りまわる姿がすごくキュートで、チェコアニメに興味を持ち、調べるうちにチェコという国自体が好きになりました。
毎週末実家に帰っていた彼女は、いつもおばあちゃんの手作りのお菓子を沢山持ち帰ってきました。
当時チェコで10キロ太って、授業のない日は近くの林でジョギングしていたのですが、帰ってくるとおかえり!とお皿においしいクッキーやフルーツケーキを山盛りにして迎えてくれて、お陰でプラマイゼロでした。笑
そのおばあちゃんは2020年に亡くなり、彼女も結婚して渡英してしまったのですが、彼女との出会いはチェコでの最も印象的な出来事の一つです。
チェコのお菓子屋「ツックル」誕生!
製菓学校のクラスメイトにスウェーデンのお菓子屋さんをやっている子がいたんです。それで休憩時間に、「みさきちゃんはチェコのお菓子屋さんをやってみたら」と言われて、確かにチェコのお菓子紹介したいかも!と思いました。
もともと趣味で「cukroví/ツックロヴィー(クリスマスクッキー)」や「koláč/コラーチ(フルーツを焼き込んだケーキ)」を焼いていたので、持っていた本や友人に教わったレシピを使ってチェコ人に試食してもらいながらラインナップを増やしました。
そして働いていた菓子店のお休みの日に、友人のカフェを間借りする形で活動をスタートしました。
チェコには王都が置かれない時期が長く、ブルジョワ文化を否定する共産時代も経験しています。人々は高価だった砂糖の代わりに入手しやすかった蜂蜜を用いたり「perník/ペルニーク(スパイスを使ったお菓子)」には高価なスパイスではなく身近だったコショウやニンニクを使ったりと、工夫してお菓子作りを続けました。
共産時代には多くの菓子店が国有化され、材料も安定して手に入らなくなったため代替品を用いて製造する必要が生じました。菓子の質が落ち、人々はますます家でお菓子を作るようになったといいます。
家で揃う材料や庭で採れた果物を使って作られた様々なお菓子は、今も「おばあちゃんの味」として多くのチェコ人に慕われています。そのレシピは代々守られ、大切に引き継がれています。
私が通っていた製菓学校はフランス菓子が専門で、働いていたお店はフランスやイギリスの菓子が多かったのですが、沢山のバターやクリーム、お酒やドライフルーツなどをふんだんに使って豪華に飾り付けるケーキを扱っていました。
もちろんフランスにもイギリスにも日常に寄り添ったお菓子は沢山ありますし、特別な日にはスペシャルなお菓子が必要だと思います。
でも私はそういった特別なお菓子よりも、日常によりそって、少し人を笑顔にできたり安心させられたりできるチェコのお菓子により魅力を感じました。
そんな気持ちで日々活動しています。
留学中に「Kremrole/クレムロレ」というコルネのようなお菓子や「indiánek/インディアーネック」というメレンゲをチョコレートコーティングしたお菓子を初めて食べたとき、生クリームと思って食べたらメレンゲで、当時まだメレンゲをそのまま食べたことがなかったので予想していた味との違いに驚きました!
次にチェコに行った際には食べてみたいと思います。
「好き!」と言う気持ちを発信したい!
現在は、そういったご経験を活かしツックルとして活動されていると思いますが、活動内容について具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか?
その後、長女を出産し自分が販売に出ることが難しくなってしまったので、オンラインショップをオープンしました。
2021年に自分の工房を持ってからは、週一度程度のオンラインショップでの販売とイベント出店、卸販売、ギフトなどのご依頼に合わせたお菓子の制作が主な活動となっています。
また、この活動を通じて「チェコの魅力を広めたい」と言うべきなのでしょうが、実際はそんなに大それたものではなく、お菓子を手に取って下さったお客様と「チェコっていいですよね〜」とお話ししたいというか、そういう時間が楽しくて活動を続けています。
大学に入るまでは、チェコが好きといっても変わり者扱いされてしまうのではと思って中々言い出せませんでした。それが大学でチェコ語専攻に入学してからは、チェコについて気兼ねなく話せる仲間と毎日過ごすことができて、とても楽しかったんです。
就職後はまた前のような状態になってしまいましたが、ツックルの活動をしている時は堂々とチェコが好き!と発信することができて、それが大きな楽しみになっています。
それでもやっぱり当店のお菓子をきっかけにチェコに興味を持って下さったとか、中には旅行へ行ってきたというお客様もいらして、そういう話を聞くととても嬉しいですし、やりがいも感じます。
今後も自分の「チェコが好き!」という気持ちを、お菓子を通して発信していきたいなと思っています。
現在、様々なチェコのお菓子を作られていると思いますが、こだわっているポイントなどはありますか?
配合は現地のものを変えず、試作時は必ずチェコ人に試食してもらってアドバイスを頂きながら改善していきます。
レシピは本に載っていたものもありますが、小さなノートに書かれた、チェコ人がそのおばあちゃんやお母さんから教えてもらったレシピが多いです。
彼らはそれを教えてくれる時、宝物のレシピだから絶対に秘密にしてね、と言います。そんな貴重なレシピで作らせてもらっていることに感謝を忘れず、これからもチェコのお菓子の魅力を追求していこうと思います。
今後の展望について
色々な体験や出会い、想いなどがたくさん詰め込まれている「ツックル」の今後の展望もぜひ教えてください!
近い将来の目標は、生菓子をもっと作りたいということ、あとはチェコのお菓子についてお話する機会を持ちたいということです。
前者について、ネットショップや卸販売では日持ちや輸送の観点で焼き菓子がメインになってしまうのですが、チェコには美味しい生菓子も沢山あります。
今は配送テストを繰り返した結果「Medovník/メドヴニーク」のみを定期販売できているのですが、もう少しラインナップを増やしたいなぁと考えています。
ネットショップでなくても、カフェやレストランで置かせてもらえたら嬉しいです!
後者は、お菓子を作る際にはレシピだけでなくその由来、背景も調べるようにしているので、それをご紹介できる場があったらなぁと思っています。
1つ1つのお菓子に思い入れがありますが、イベント出店時は全てを説明しきれませんし、パンフレットにも書ききれないので、そんな機会があったら嬉しいです!
チェコの魅力をもっと感じてみませんか?
お話を聞けば聞くほど、チェコに行った際にもっとお菓子を食べておけば良かったと思うばかりです・・・!
お時間をいただき、ありがとうございました。
ツックルでは、オンラインショップを中心に販売を行っています。最新情報は、公式アカウントをチェックしてみてください。