チェコの方々は「黄金の手を持つ」と言われるほど手仕事を得意とし、伝統産業の1つ「ボヘミアガラス」にはその手仕事から生み出された繊細で美しいデザインが施されています。
ボヘミアガラスと聞くとガラス製の食器をイメージする方が多いですが、チェコのガラス技術は食器にとどまらず「ガラスビーズ」や「ガラスボタン」も代表的な伝統産業の1つです。
その独特な色合いや質感、古き良きデザインにチェコガラスのファンになった方も多くいらっしゃることでしょう!
今回は、日本国内におけるチェコビーズやチェコガラスの第一人者である 野田リベイル明子(ビビアナ)さんが2007年にご夫妻でスタートした「ボヘミアの宝箱(現BEADER)」にお邪魔して、チェコガラスの魅力についてお話を伺ってきました。
ちなみに、ビビアナさんは、ガラスや宝飾品の産地として有名なヤブロネツ・ナド・ニソウに本社を構える「ヤブロネックス社(当時)」で日本連絡事務所のマネージャーを20年勤め、その後もボヘミアガラス関連の貿易に携わってきたそうです!
本日のお相手
この日お相手してくれたのは、ビビアナさんの旦那さんであり、長きにわたり一緒にボヘミアガラス関連の貿易にも携わってきたペドロさんです。(現在は、BEADERの専務取締役を務めています)
ビールが大好きで、出張でヤブロネツ・ナド・ニソウに行く際には、必ず立ち寄るブルワリーもあるそうですよ!
目次
チェコのガラス工芸との出会いについて
ビビアナからは、学生時代の就職活動の際に「英語のできる人材を探している」という求人を見て応募したのがきっかけだったと聞いています。
もともとは、大使館の中の1つのセクションとしてチェコ・スロバキアのガラス関係の輸入を行っていたそうなのですが、その後ヤブロネックスとして民営化。その際の東京事務所のスタッフとして入社したそうです。
私はというと、2002年に日本にきまして、やはり「英語が活かせる仕事」を探していました。その時に、友人を介してビビアナが務める事務所を紹介してもらったのがきっかけですね。
偶然の出会いで、チェコとの縁が生まれました。
ペドロさんも英語が話せるとはいえ、いきなりボヘミアガラスの世界に入るのは大変だったのではないですか?
しかし、私の父はポルトガルでガラス職人として働いていましたので、普通の方よりもガラスの知識はありましたし、新しいことも覚えるのがスムーズだったと思います。
どんどん営業に出たり、日本とチェコを繋ぐ役割を果たす仕事を日々こなしていました!
日本におけるチェコガラスビーズの存在
当時、自分でアクセサリーを作ることが「日本人の新しい趣味の1つ」として受け入れられ、国内はもちろん世界からビーズが集まり、国内で最大の「ビーズブーム」となりました。
私やビビアナが携わっていた日本事務所も、ヤブロネックスで1番になるくらい販売実績を残したこともありましたよ!
ブームに乗りチェコガラスビーズももちろん売れました。しかし、当時は「インポートビーズ」という扱いでしかなく「チェコガラスビーズ」として販売していたお店は本当に一部だったと思います。
そして2005年のビーズブーム以降、日本のビーズ市場が大幅に縮小。そのしわ寄せは、インポートビーズにも訪れます。
当時、ビビアナとも「この仕事を終わりにするべきか・・・」と悩んだ時期もありましたが、逆に「これを機に、独立して可能な限りやっていこう!」と立ち上げたのが、南蛮貿易株式会社です。
ヤブロネックスの社員という立ち位置ではなく、ビジネスパートナーとしてお付き合いを続け、チェコガラスビーズの魅力を引き続き日本で広げていこうと決心しました!
チェコガラスビーズの魅力とは。
長くチェコのガラス工芸と向き合ってきたペドロさんから見る、チェコガラスビーズの魅力とはなんでしょうか?
例えば、ガラスビーズの色の名前は宝石の名前を使っているもが多くあります。昔は、宝石の代わりとしてガラスを用いていたこともあり、より宝石に近い色や透明感を再現する必要がありましたので、その技術が今に残っているのは間違いありません。
透明感があり、かつこのような色合いを出せるビーズも珍しいのではないでしょうか。
また、歴史的背景を見てみても、第1にこのエリアにキリスト教が広がった際には「ロザリオ」が必要となりました。それをきっかけに、ビーズがどんどん広がっていったと考えられます。
第2にファッションセンスの向上ですね。パリなどの都市部を中心に、ファッションアクセサリーの需要が高まりガラスビーズもアクセサリー分野で大きく発展していったと考えています。
以前、お子様づれのお客様がお店にいらっしゃったのですが、小さいお子さんがビーズを見て「綺麗な青!」って言ったんです。
きっと、まだ小さいですしビーズそのものには興味はなかったでしょう。それでも、第一印象として「綺麗!」と子どもの目にも映っているわけなんです。このシンプルな美しさこそチェコビーズの大きな魅力なのではないかなと考えています。
実は、そういったガラズビーズの魅力を発信していくためにも、お店の名前を「BEADER」に変更したという経緯があるんです!
チェコのガラスビーズ・ボタンの今と昔
ただ、1つお伝えしたいのは、ビーズにおいては「マシンメイド」「プレスメイド」に違いがあるということです。
マシンメイドは、その名の通り機械で大量生産されているものです。大手メーカーは、この方法で決められたデザインを大量に作ることが可能になりました。
逆に「プレスメイド」とは、人の手で作るものになります。手作業だから作り上げることができる「無限のデザイン」こそ、皆さんにぜひ知って欲しい魅力の1つなんです!
もちろん、マシンメイドが悪いということはなく違いを知って欲しいということですね。
マシンメイドは、チェコのガラスビーズを量産できるというメリットがあります。
プレスメイドは、人の手が作る無限のデザインと、独特な温かみが特徴的なんです。
ちなみに、ガラスボタンについてはどうでしょう?
ガラスボタンの制作は、今でも1,2名でやっている工房が手作りで作っていて、それを取りまとめている会社があるという形です。
ガラスボタンは専用の金型を使い作るのですが、新しいものでも40〜50年前の金型じゃないでしょうか。古いものは、100〜200年前のものも存在します。
チェコのガラスボタンの魅力は、今も昔も変わらない「古き良きデザイン」にあると思っています。多分、それはガラスボタンが好きな方やコレクションとして集めている方も同じで、きっと「(金型の)新作デザイン」は求めていないかもしれませんね。
もちろん、ボタンの色付けまで職人が手がけています。
ガラスビーズが、美しく宝石に負けない綺麗さ、そして独特な色使いが魅力的。
対して、ガラスボタンは「完璧ではない美しさ」が魅力だと思います。
100年前の金型があったとしたら、それを使ってボタンを新しく作ることができます。しかし、ヴィンテージとして人気のものは、古い金型で新しく作ったものではなく、昔作ったボタンがそのまま残っている状態のものになります。
ただ「昔ながらのデザイン」という意味では、金型さえあれば作ることができるので、昔の金型を使って今風に色付けされたものもあるんだとか。
「BEADER」のこだわりについて
南蛮貿易株式会社時代は、アクセサリー(完成品)を輸入して国内に卸していることが多かったです。
ただ、そのままだと売上が伸びないことも理解していました。
チェコ本国のものが、全てそのまま受け入れられるとは限らないのです。好みの色も、色の組み合わせも、サイズも国が変われば少しずつ好みも変わってきます。
そこで、チェコビーズの魅力は削らずに、日本人の好みに合わせたデザインを起こし、チェコで作ってもらったガラスビーズも用意しています。もちろん、無限のデザインが魅力的なプレスメイドのビーズもありますよ!
世の中全体で見れば「ガラズビーズ需要」は非常に小さいシェアだと思います。しかし、少しずつチェコガラスビーズはもちろん「自分で作る楽しさ」を体感している良き理解者が増えているのも事実です。
私たちは「自分で材料を買って、自分好みのアクセサリーを作る」という文化は、これからもずっと残していくべき文化だと考えています。
20代〜30代の若い層の方々も、ピアスでも指輪でもなんでも良いので自分好みのアクセサリーを身につけてみてください。
多くのお店がチェコガラスビーズを扱っていたにも関わらず、チェコビーズと表記せずインポートビーズと書いて売っていたというあの時代。
「(チェコガラスビーズは)こんなに良いものなのに!」と思いましたし、悔しさすらありました。
それを晴らしたい!
これも、チェコビーズに特化したお店をやろうと思ったきっかけですね。
自分の作りたいものを作っている人には、必ずチェコビーズが役に立つと思うんです。デザインも豊富で、他には出せない色合いもあります。
「こんなものを作りたいんだけど、イメージに合う材料がない」という方がいたら、お店に足を運んでみてくださいね。
もちろん、まずはチェコガラスビーズがどういうものなのか体感してもらうだけでも十分です。お気軽にお店にお越しください!
Special Thanks!!
お店には、ビーズを含む約5000種類のガラスパーツを取り揃えている「BEADER」。
お話を伺っている際にも、アクセサリー作り体験をしているお客さんもいらっしゃいました。
自分だけの、自分好みのアクセサリーを作りたい方は、「BEADER」が強い味方になってくれることでしょう!
ペドロさん、お時間いただきありがとうございました!( by nocco )
きっかけは奥様のビビアナさんと聞いていますが、お二人とも昔からチェコに興味を持たれていたのですか?